« 「'13CBR600RRレビュー」TOPに戻る
RC46-2 V4の変遷
並列4気筒エンジンの後継機として開発されたV4
1969年のCB750FOURの大ヒットにより量産インラインフォアをいち早く確立したHondaは、CB-FシリーズやCB1100RのDOHCハイパワーマシンを次々と生み出した。一方、ロードレースの世界ではさらなる高性能化を目指したオーバルピストンエンジンのNRを誕生させていく。バイクのエンジンとしての究極型をV型に求めたHondaは、'82年にVF750セイバー/マグナ/インターセプターを発表した。DOHC水冷V4エンジンを搭載する先進的マシンは、多くの技術的困難を克服した意欲作であった。コンパクトで高回転化が可能、振動面でも有利なV4は、レーサーからツーリングバイクまで幅広い対応を可能とした。
その反面、生産上の制約が多く、コスト面では不利となる。VF〜VFRシリーズが割高な設定なのはそのためだ。しかし、V4エンジンがもたらすメリットはスムーズなエンジンフィールにとどまらず、ハンドリングの向上や車体ディメンションの最適化という、バイクが一番必要とする性能要件を高次元でかなえるキーアイテムであることに違いはない。HondaがV4を開発し続ける理由はそこにある。
 
※画像をクリックすると拡大表示されます。
VF750 セイバー(1982年) VF750 マグナ(1982年) VF750F(1982年) VF400F(1982年)
最先端テクノロジーを満載して登場したセイバーは、V4エンジン+シャフトドライブのスポーツツアラー。北米指向のアメリカン・マグナと同時発表。本命のスーパースポーツであるVF750Fは遅れて12月市販開始。輸出名は「インターセプター」とされ、大ヒットを記録。V4エンジンは、400ccクラスにも波及し、Hondaの先進性を大きくアピールする事に成功。直4派と人気を二分した。
VFR750F/RC24(1986年) VFR750R/RC30(1987年) RVF/RC45(1994年) VFR400Z(1987年)
V4エンジンはカムギヤトレーンとなり、さらにハイパワー化。VFR750Fの輸出仕様は100psを発揮。VF1000Rに至っては122psを発揮しロードゴーイングレーサーの先駆けとなった。ワークスマシンばりの高性能レプリカとして一世を風靡したVFR750Rは'87年に登場。ほぼレーシングマシンと言えるRVFへ進化していく。VFRは400ccにおいても人気を博し、ノンカウルレプリカのVFR400Zも登場した。
VFR750F/RC36(1990年) VFR/RC46-1(1998年) VFR/RC46-2(2002年) VFR1200F/SC63(2010年)
高性能ツアラーとして生まれ変わったRC36は、リアにプロアーム、フロントにカートリッジフォークを装備する高級指向。ハンドリングやエンジンフィールが磨かれ、ベストバランスのマシンとなる。'98年にはRVFから派生した781ccエンジンのVFRへと進化する。そのRC46は、'02年にフルモデルチェンジを受け、RC46-2となる。エンジンはカムギヤトレーンをやめHYPER-VTECを採用。低回転域でのドライバビリティを大幅に向上した。ハイスピードツアラーとして完成型といえるトータルバランスを実現している。珠玉のV4はさらなる進化を目指し、今年VFR1200Fへバトンを繋ぐ。
ページTOPへ
1982年に登場したVF750から進化・熟成を重ねたV4エンジンを搭載するVFR=インターセプターの魅力は「ベストバランス」であることだろう。扱いやすい出力特性や素直なハンドリングはもとより、ライディングを楽しめる程よいスポーティさが熟成されたシャーシが醸し出す高級感と融合してすべてのライダーに心地よい満足感を与えてくれる。
レースに勝つための切り札として始まったV型エンジンは多くの成功をHondaにもたらしたが、現在のVFRにおいてはグランツーリモ的な役割をもたらす高品位エンジンとしてV4を用いている。
その洗練ぶりは他メーカーのマシンにはない素晴らしいものだ。Hondaが世界に誇る先進性の象徴でもあるV4は、時代の要請から今回DCTなどのハイメカを搭載した1200ccへと生まれ変わった。この新型の性能も目を見張るものだが、RC46-2(VFR800)が持つ「孤高の完成度」はHondaV4の30年の歴史に裏打ちされた価値あるものとして今も燦然と輝き続けているのだ。
文/佐川健太郎
 
ページTOPへ