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MTとATのメリットを融合
VFR1200Fの目玉となる新機構がDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)である。これは環境や安全とともにホンダが今後力を入れる分野として掲げる「操る楽しさ」を具現化したものだ。DCTは簡単にいうと有段式のオートマチック。通常のバイクはマニュアル式トランスミッションを採用しているが、そのメリットを生かしたままオートマ化している点が特徴である。スクーターで一般的なCVTやDN-01に搭載されるHFTなどとは異なる2輪用としては世界初となる駆動系システムなのだ。MTのダイレクトな駆動力とATのイージーな操作性を高い次元で両立したもので、「簡単な操作でスポーツライディングを最大限楽しめる」という新しい価値をより多くのライダーに提供していくのが狙いである。
途切れのないシフトを実現  
DTCは4輪の世界では普及しているシステムだがコンパクトな2輪用エンジンに搭載するためには多くの制約があった。これを解決するためのアイデアがクラッチの2重化である。右図のように1・3・5の奇数段(緑色)と2・4・6の偶数段(水色)それぞれに独立したクラッチがあり、インナーとアウター2つのシャフトによって同軸上に配置されているのが特徴。シフトスケジュールは電子制御によって最適化され、変速は油圧によって作動する2対のクラッチで行われる。奇数段と偶数段を受け渡すときに半クラをオーバーラップさせた状態を作り出すことで、シフトショックのないスムーズで途切れのない加速や減速を可能にしているのだ。疲労低減やタイヤ寿命や燃費の向上などDTCがもたらすメリットは大きい。
走行モードで多彩な走りが楽しめる
DTCにはATとMTの2つの走行モードが設定され、ハンドルにセットされたスイッチによって切り替えることができる。「ATモード」は走行状態に応じて的確なシフトアップ&ダウンを自動的に行うのに対し、「MTモードは」ライダーの意志でギヤ選択ができるのが特徴。さらにATモードには「Dモード」と「Sモード」の設定があり、燃費重視の快適走行から回転数をキープするようなスポーツ走行まで、その時々の気分やシチュエーションによって走りのバリエーションを楽しめる点も大きな魅力である。クラッチ操作が不要でシフトミスの心配もないため、誰でも安心してライディングに集中できるし、シフトショックがないためタンデム走行も快適。VFR1200Fは今までにない新しいライディングの世界を見せてくれるはずだ。
(資料協力:バイクメカニクス/モーターマガジン社)
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